高齢の方や遺伝によって発生しやすい、大腸がんについて解説します。
※2025年4月時点の情報をもとに作成しています。
がんができる場所によって小腸に近い「結腸がん」と、肛門に近い「直腸がん」に分けられる大腸がん。大腸のなかでがんができやすい場所は、直腸とS字結腸と呼ばれる場所です。
大腸がんは早期に治療すれば、内視鏡による手術や治療で治すことができます。初期の粘膜下層がん、粘膜がんであれば高い確率で内視鏡手術により、治すことのできるがんなのです。
ただ、早期がんの段階では、進行期に見られる血便や排便異常などの症状は現れません。そのため多くの消化器内科では、微量な出血の段階で大腸がんを発見するために、「便潜血反応検査」を実施します。この検査では、便に少量でも血液が混ざっていないかを調べることが可能です。
大腸がんは遺伝によって発生しやすいといわれているため、40歳以上で大腸がんの家系であり、大腸ポリープの経験や血便がある、便潜血反応検査で陽性反応が出る場合には内視鏡による詳細な検査を受けたほうがいいでしょう。
大腸がんの検査には肛門からバリウムと空気を入れ、大腸を膨らませた状態でX線撮影をする「注腸造影検査」という方法がありますが、腸壁にできるがんの形状によっては見つからないことがあるうえ、現在では「CTコロノグラフィ(仮想内視鏡検査)」の普及により、注腸造影検査はほとんど行われなくなっています。
CTコロノグラフィは、X線CTを利用して大腸の内部構造を3Dで再構築する検査法で、内視鏡を挿入せずにポリープや腫瘍を検出できる非侵襲的な方法です。大腸内視鏡検査に比べて検査時間が短く、内視鏡挿入が困難な患者にも適応されることがありますが、異常が見つかった場合には内視鏡による精密検査や処置が必要です。
一方、現在の主流である肛門から内視鏡を挿入して大腸をくまなく調べることができる「大腸内視鏡検査」は、注腸造影検査やCTコロノグラフィでは発見しにくい微細な病変も直接確認・処置できる点で優れています。
バリウムと空気を肛門から注入して、レントゲンでの撮影をおこなう検査です。がんのできている位置や大きさ、大腸全体の様子を調べることができますが、現在ではほとんど行われていません。
X線CTを用いて大腸の内部をコンピュータ処理で3D画像として再構成する検査です。内視鏡を使わないため苦痛が少なく、穿孔などのリスクもありません。内視鏡が挿入困難な高齢者や術後の患者にも有用ですが、組織の採取や治療はできないため、異常があった場合は内視鏡検査が必要になります。
肛門から内視鏡カメラを入れ、大腸の内部をモニター画面で見ながら確認します。小さな腫瘍であればその場で切除したり、検査のために細胞の採取をしたりすることができます。
身体のどこかにがんがあると、異常な数値が出ることから腫瘍の有無を確認できる検査です。血液検査で、CEAやCA19-9という血液中の数値を調べます。
超音波を使って、大腸がんと周囲の臓器が接触していないかや、がんが転移していないかを調べます。
X線を使うことで、身体の内部を描き出すことができる検査です。
MRI検査は強い磁場と電波を使って、大腸や周囲組織の断層画像を撮影する検査です。
微量の放射性物質を含んだブドウ糖を注射し、がん細胞の代謝活性を可視化する検査です。全身に広がったがんの状態を調べることができます。
病期(ステージ)とは、がんの進行度合いを示す言葉です。「ステージ」とも呼ばれます。 大腸がんでは、進行に合わせて0期、I期、II期、III期、IV期に分類されています。大腸がんにおいてはがんの大きさにかかわらず、がん細胞が大腸の内側からどれだけ入り込んでいるか、周辺組織への浸潤(広がり)の具合、リンパや他臓器への転移があるのかによって決められます。ステージのクラス分けは以下の通りです。
0期の大腸がんの状態は、粘膜下層までの浸潤となっており、まだリンパ節転移がない状態を指します。この段階で治療ができた場合、5年生存率は99%。
できる限り早期に見つけたほうが当然ながら5年生存率は高くなります。治療の基本は内視鏡切除術です。
大腸がんを治すためにはがんを残すことなく切除しなければなりません。そこで取られるのが内視鏡治療です。
0期はまだ浸潤が浅いこともあり、内視鏡のみで取り除ける可能性も高いのです。肛門から内視鏡を入れ、ポリペクトミーと呼ばれる内視鏡とワイヤーを使った治療法や、EMRと呼ばれる病変を浮き上がらせてから焼き切る治療法のほか、ESDと呼ばれる電気メスで剥ぎ取る方法などが代表的です。
1期は粘膜下層までの浸潤にとどまっている状態であり、またリンパ節転移が見られません。
こちらの場合、5年生存率(ネット・サバイバル)は92.3%。
99%の5年生存率を誇る0期に比べると落ちますが、それでもかなり初期段階といえるでしょう。手術については内視鏡手術と鏡視下手術が行われます。
先述した内視鏡治療のほか、鏡視下手術も行われるのですが、鏡視下手術は患者さんへの負担が小さい治療法として注目されています。
小さな傷で済むので回復も早く、入院期間を短く済ませられるのも大きな魅力だといえるでしょう。
病院によっては進行がんも腹腔鏡下手術の対象としているところもあり、開腹手術に比べると出血量も少なく、1期など初期に発見されたものは腹腔鏡下手術で対応できる可能性も高いです。
2期の大腸がんは、がんが大腸の筋層から漿膜(しゅんまく)まで浸潤しているものの、リンパ節や他の臓器への転移は認められない状態を指します。5年生存率(ネット・サバイバル)は85.5%とされ、早期の段階と比べるとやや下がりますが、依然として高い治療成績が得られるステージです。
基本的な治療は開腹手術や腹腔鏡下手術による腫瘍の切除です。2015年以降は、患者の身体的負担が少ない腹腔鏡手術が多く行われています。
また、2期の大腸がんに対しては、術後補助化学療法(adjuvant chemotherapy)の適応が一部で推奨されるようになってきました。特に以下のような再発リスク因子がある場合に、化学療法の導入が検討されます。
これらのリスク因子が認められる場合、5-FU系抗がん剤(例:CAPOX、FOLFOXなど)による術後補助療法が選択肢となります。一方で、リスクが低いと判断される場合は、手術単独での経過観察が選ばれることもあります。
補助療法の要否は、病理結果や患者さんの年齢・体力、希望に応じて主治医と十分に相談することが大切です。
3A期とは、3個以下のリンパ節転移があるほか、リンパ管とリンパ節ががんに浸潤されている状態のこと。
3B期とは、4個以上のリンパ節転移があるほか、リンパ節ががんに強く浸潤されている状態のことをいいます。
5年生存率(ネット・サバイバル)は75.5%。リンパ節転が認められた場合にはD3郭清(栄養血管の根元部分にある主リンパ節の切除)を行う他、3A期・3B期に入ってくると新たに抗がん剤治療という選択肢が出てきます。
また、標準治療だけでは十分な効果が得られなかった場合には「樹状細胞がんワクチン」を選択することもあり、こちらは標準治療と組み合わせることによって効果が期待される免疫療法です。
大腸からリンパ管・リンパ節・静脈を通ったがんが転移している状態のことをいいます。5年生存率(ネット・サバイバル)は極端に低くなり、18.3%。
治療は開腹手術、抗がん剤治療、先述した樹状細胞がんワクチンなどです。
遠隔転移巣の切除が可能で原発巣の切除もできる場合はそれぞれの切除を行いますが、原発巣の切除ができなかった場合は両方において切除以外の対応を取ることになります。
また、遠隔転移巣の切除が不可能ではあるものの原発巣の切除が可能で、さらに原発巣による症状がある場合には原発巣は切除し、転移巣に関しては切除以外の対応を取ることになるので医師の説明をよく聞いて理解を深めましょう。
結腸がんも直腸がんも、初期であれば切除が治療の中心になります。ただし、がん細胞が周囲の組織に浸潤している可能性がある場合、直腸がんの手術は難しいものになります。直腸の周囲には排尿・排便・男性機能などをつかさどる神経や筋肉が密集していて、がんを切除するときにそれらを傷つけてしまうかもしれないからです。
大腸がんの治療では、外科療法・化学療法・放射線療法を組み合わせて治療をおこなっていきます。また大腸は抗がん剤や放射線が効きにくいため、薬剤や放射線を使う場合でも手術前にがんを縮小させたり、手術後に細かく散らばったがん細胞を死滅させたりするといった補助的な役割で用いられます。
進行した大腸がんでは、がんが他臓器やリンパ節に転移している場合が多く、治療は外科手術に加え、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を組み合わせた集学的治療が基本となります。
かつては「大腸がんは抗がん剤が効きにくい」とされていましたが、近年では分子標的薬(例:ベバシズマブ、セツキシマブ)や免疫チェックポイント阻害薬(MSI-High例におけるペムブロリズマブなど)の登場により、薬物療法の効果が大きく向上しています。特にStage IVや再発例では、これらの薬剤を組み合わせた化学療法が中心的な役割を担います。
放射線治療に関しては、結腸がんでは腸管が動きやすく、放射線による正常組織への影響が大きいため、一般的には行われません。しかし、直腸がんでは骨盤内に固定されているため、放射線治療の効果が期待できるとされており、特に局所進行直腸がんに対しては術前放射線化学療法(ネオアジュバント療法)として用いられることが標準的です。
さらに、陽子線治療や重粒子線治療といった先進的放射線治療は、手術が困難な直腸がんや再発例、放射線に対する感受性が高い症例において、選択肢として検討される場合があります。これらの治療法は、周囲の正常組織へのダメージを抑えつつ、局所に高線量を集中できるという特長があり、消化管出血や腸管穿孔といった副作用のリスクを軽減できる可能性があります。ただし、標準治療としての位置づけではなく、専門施設での適応判断が必要です。
大腸がんは、肝臓や肺に転移しやすいがんとして知られています。
ある報告によると、大腸がんが発見された時点において、すでに10.9%の例において肝臓転移、2.4%の確率で肺転移が見られるとされています(※)。
遠隔転移の起こりやすい大腸がんですが、他の臓器等から始まった遠隔転移に比べ、治療の効果が現れやすいことも特徴。肝転移や肺転移の場合、早期発見で適切な治療を受ければ、完治を目指せる場合もあります。
※がんプラス|大腸がんの遠隔転移 肝臓、肺、脳の転移巣に対する第一選択は手術、局所療法を検討
https://cancer.qlife.jp/colon/colon_feature/article2366.html
大腸がんは、肝臓や肺、脳などに転移しやすいことが分かっています。
大腸がんが肝臓へ転移しやすい理由は血管の構造。大腸をはじめ、他の消化管から流れる血管は「門脈」という1本の血管に集約されますが、この門脈からの血液は、一度肝臓へと集約されます。集約された血液の中に大腸がんの細胞が含まれ、かつ肝臓で生着すれば、転移性肝臓がんに発展するリスクが高まる、という理屈です。
また、肝臓に集まった血液の全ては、二酸化炭素と酸素の交換のため肺へと到達。結果、転移性肺がんのリスクも生じます。
なお、脳への転移の場合、大腸がんから脳へ遠隔転移することはありません。肝臓や肺に転移した後、脳へ転移する順番となります。
大腸がんが肝臓へ転移した場合、腹痛や背中の痛み、腹水、黄疸、むくみ、食欲不振、体重減少などの症状が見られるようになります。また、肝臓から肺へ転移すれば、息苦しさや息切れ、咳、血痰などが見られることもあります。
さらに脳へと転移した場合、感覚障害や認知障害、運動障害、言語障害、視野障害など、がん細胞の影響を受けた部分に応じて様々な症状が生じます。
なお、肝臓や肺へ転移したとしても、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。がん細胞が増殖・拡大していくにつれ、徐々にこれらの症状が現れる形となります。
当サイトでは、保険診療で受ける「抗がん剤治療」と、自由診療で受ける「トモセラピー」や「樹状細胞ワクチン療法」でステージ4のがんを治療する方法について紹介しています。がんの進行度により、医師と相談して検討しましょう。
画像引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
痛み・副作用の少ない放射線療法
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所在地 | 東京都渋谷区元代々木町33-12 |
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電話番号 | 03-6407-9407 |
画像引用元:銀座鳳凰クリニック公式HP
(https://www.ginzaphoenix.com/)
患者の細胞からワクチンを作製
免疫細胞を研究している院長のもと、免疫の司令塔である樹状細胞を使ってがん免疫療法を行っているクリニックです。患者様専用のワクチンを作るイメージで、治療の手立てがないと言われた患者様へも提供可能な治療法です。しっかりと寄り添って治療を進めていく姿勢も、治療を選択する要因になっているようです。
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング6F |
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電話番号 | 03-6263-8163 |
画像引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
新しいがん治療薬の導入に積極的
抗がん剤による薬物療法が進む中、「先端医療開発科」が創設され、新しいがん治療薬での治療をいち早く受けられるよう、早期臨床開発を推進している病院です。幅広い知識と経験を持つ専任医師とスタッフが、それぞれの患者様に合った臨床試験を提案し、これまでの薬では治らなかったがんの治療に取り組んでいます。
所在地 | 東京都江東区有明3-8-31 |
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電話番号 | 03-3520-0111(大代表) |