日本人の死因の中でも、かなりの割合を占める肺がんについて詳しく解説します。
肺がんとは、肺から発生するがんのことです。厚生労働省による2023年の人口動態統計をみると、がん(悪性新生物)を要因とする死亡数・死亡率において、肺がん(気管・気管支も含む)は、男女共に最多の死因です。
特に男性の死亡数(52,908)は女性の死亡数(22,854)の倍以上となっています。
肺がんの原因として、やはり喫煙が大きく影響するといわれています。日本人を対象として2008年におこなわれた研究では、男性で4.8倍、女性で3.9倍喫煙者の肺がんリスクが高いという結果になりました(※)。
肺がんの主な症状は、いつまでも続く咳、血痰、胸の痛み、呼吸時にぜーぜーと音がする(喘鳴/ぜいめい)、息切れなどです。しかし、これら全ての症状が必ず出るわけではなく、無症状のままがんが進行するケースも多く見られます。症状があった場合でも、風邪や喘息だと軽く考えていて、職場の健康診断などでがんが見つかることが多いようです。
肺がんは治療法や性質、悪性度を見分けるために大きく「小細胞がん」と「非小細胞がん」に分けることができます。そのなかでも「非小細胞がん」は、「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に区分けされています。
肺がんは早期がんの段階では症状が出ないことが多いため、発見されにくいがんのひとつです。多くの患者さんは続く咳や痰、血痰などをきっかけにして、何かおかしいようだと気づきます。しかし、肺野部に発生するがんはかなり進行しても、症状が出ないことがあります。
肺がんを早期に発見するためには、症状が出る前に定期的な検査を受けることがとても大切です。
従来は「胸部X線検査」や「喀痰(かくたん)細胞診」が主に使われていましたが、これらの方法では小さながんを見落とす可能性があるため、現在ではより精度の高い方法が注目されています。
2020年代以降、特に「低線量胸部CT(LDCT)検査」が、肺がんの早期発見に有効であるとされ、喫煙歴がある方を中心に国際的にも推奨される検査方法となっています。
日本でも、喫煙歴や年齢などのリスク要因に応じて、LDCT検査を導入する動きが進んでいます。がんが疑われる場合には、より詳しい検査として「PET検査」なども併用されます。
肺がんは早期には自覚症状がほとんど出ないことが多いため、リスクのある方は自発的に検診を受けることがとても重要です。
肺がんの病期(ステージ)は、がんの大きさと浸潤、リンパや別の場所に転移がないかといった点を総合的に判断して決められます。
肺の一部にがんがあるのみでどこにも転移がないものがステージ1、気管支周辺やリンパに転移がある場合にはステージ2…と進み、ステージ4の場合には肺の別の場所や、悪性胸水、脳、肝臓、副腎、骨などに転移がある状態です。
肺がんの治療法は、がんの種類(非小細胞がんまたは小細胞がん)、病期(ステージ)、がんの広がり、遺伝子変異の有無、患者さんの全身状態などに基づいて決められます。
がんの進行が進んでいない段階で、肺の中にとどまっている場合には、手術でがんを取り除くことが一般的な治療法です。
手術後の経過によっては、がんの再発を防ぐために、薬(抗がん剤)を使う治療が追加されることもあります。
医師から手術を勧められた場合、それは回復が見込める段階のがんであるということです。
がんが肺の外やリンパ節に広がっている段階では、手術だけでは対応が難しいため、薬による治療(抗がん剤)や放射線治療が中心になります。
2020年ころからこのような治療に加えて、患者さんご自身の免疫の力を活かす薬(免疫療法)を使うことで、再発や進行を防ぐ方法も取り入れられています。
放射線治療は、平日毎日(週5日)を約6週間続ける形で行うことが一般的です。1回の治療時間は数分程度で、痛みを感じるケースはごくまれです。
小細胞肺がんは、進行が早く、見つかった時にはすでに全身に広がっていることが多いため、体全体に効く薬での治療が基本となります。
この場合は、薬による治療に加えて、がんのある部分に放射線を当てる治療が行われます。
治療の効果が見られた場合には、脳への転移を防ぐために、頭部への予防的な放射線治療を行うこともあります。
2020年ころからは、免疫療法と、従来の抗がん剤を組み合わせた治療が主流になっています。
これにより、以前よりも治療効果が長く続きやすくなりました。
また、骨や脳など、症状が強く出る場所にがんが広がっている場合には、症状を和らげる目的で放射線治療を行うこともあります。
肺がんは、比較的他の臓器に転移しやすいがんと言われています。
肺がんが転移しやすい理由は、肺自体が血液の集まりやすい臓器だから。肺に到達した血液が肺のがん細胞を伴って別の場所へ移動し、その場所でがん細胞が増殖すれば、がん転移となります。
また、肺はリンパ系のネットワークが張り巡らされている臓器でもあることから、がん細胞がリンパの流れに乗って別の場所へと転移することもあります。
血液の流れによって肺がんが他の場所へ転移した場合、原発巣とは反対側の肺、または骨、肝臓、脳、副腎などに転移しやすいとされています。
また、リンパの流れによって肺がんが転移する場合、リンパの流れに伴い隣接するリンパへと広がります。具体的には、原発巣にもっとも近いリンパ節から転移し、やがて肺門リンパ節、縦隔リンパ節、反対側のリンパ節という順で拡大・転移していきます。
なお、血液の流れにより転移することを「血行性転移」、リンパの流れによって転移することを「リンパ性転移」と言います。
骨に転移した場合の主な症状は、転移した部分における骨に痛み。痛みとあわせ、もし転移した場所が背骨であれば、がん細胞が脊髄を圧迫して手足に麻痺が生じることもあります。
脳に転移した場合の主な症状は、吐き気、頭痛、けいれん、脳卒中に似た症状など。脳膜にがん細胞が拡大すれば、吐き気や頭痛、髄膜炎に似た症状が生じることもあります。
そのほか、肝臓に転移した場合には黄疸、胸膜に転移した場合には息苦しさを感じることもあります。転移の影響で心臓の周囲に水がたまれば、仰向けで寝られないような息苦しさが生じる場合もあります。
なお、いずれの場所への転移であっても、病変が小さい間は自覚症状がほとんどありません。
がん治療を行っていく上で大きな心配につながりがちなのが費用に関する問題です。肺がんになった場合、治療費はどれくらいかかるのでしょうか。
初期のがんの場合、手術も簡単なもので済みます。そのため、総合的な治療費も抑えられるでしょう。
保険が適用になる場合は自己負担額は3割となるわけですが、大体の相場として最低でも500,000円以上の自己負担になるケースが多いです。初期の段階で治療を開始することができず、他の臓器に転移してしまったような場合は2,000,000円以上の治療費がかかることもあります。
入院が必要になれば入院費についても考えなければなりませんし、入院日数が少なければその分費用も浮かせられます。
公的補助として医療費控除や高額療養費制度といったものもあるので、忘れずに申請しましょう。詳細については市役所に相談に行くとわかりやすく教えてもらえます。
また、肺がんの治療法の中には保険適用外になるものもあります。先進医療などを取り入れる場合は自己負担になる部分が大きいため、選択する治療法についてはよく検討しておきましょう。高度な治療法の中には全額自己負担となるものもあるため、総合的にいくらの費用がかかるのか医師に確認し、十分に理解した上で検討する必要があります。
治療費をできるだけ抑えるために何よりも重要なのが、早期発見に努めること。早期発見ができれば治療は短期間で済むため入院が必要なかったり、手術も簡単なもので済むことから治療費は大幅に抑えられるでしょう。
何となく違和感を覚えているものの、「病院に行ってがんだと言われると嫌だから…」となかなか検査に行かない人もいますが、状態が悪化してから治療を開始すると命の危険があるだけでなく、治療費もかかるということは十分に理解しておきたいですね。
肺がんになってしまうと様々な不安を抱えることになります。その中でも、どのような痛みが出るのか…と、不安になる人も多いでしょう。
しかし、肺は痛みに鈍感な臓器とされており、肺がんになってすぐにひどい痛みが出るケースは稀です。
ただ、風邪ではないものの原因不明の咳があり、咳をした際に胸に痛みを感じるといった理由で病院を受診し、肺がんが発覚する方もいます。
症状が初期の段階であれば痛みはそれほど感じませんが、肺がんが胸膜に達した場合には痛みを感じることが増えるでしょう。これは、肋骨や筋肉ががん細胞に侵されることによって発生する痛みです。
代表的なのは胸の痛みですが、他にも背中や腰、肩に痛みを感じる方もいます。中には肩が痛くて整形外科を受診したところ精密検査を勧められ、その結果肺がんと判明するようなケースもあるのです。背中や肩、腰に原因不明の痛みがあり、マッサージなどの治療を受けているものの全く変化がみられない場合は、一度病院で精密検査を受けてみましょう。
また、代表的な痛みは胸、背中、肩、腰に現れやすいのですが、症状の一つとして頭痛を感じる方もいます。このように胸以外の痛みがあったとしても肺がんと結びつけて考えられる方は少ないですが、様々な部位に痛みが出やすい病気ということを知っておくと、こういった部位に痛みが出た際に「もしかしたら…」と疑うことができるでしょう。
それから、治療を行っていく中で放射線治療をすると、胸焼けや痛みを感じることがあります。この場合は必要に応じて痛み止めが処方されるので、医師に相談をしながら治療を進めていくことが大切です。
肺がんの治療として開胸手術を行った場合、手術後の痛みが原因でうまく咳ができなくなり、痰が出せなくなることがあります。これが原因で肺炎に繋がってしまう可能性もあるため、看護師に相談をしながら水分を補給し、しっかり痰を出しましょう。
当サイトでは、保険診療で受ける「抗がん剤治療」と、自由診療で受ける「トモセラピー」や「樹状細胞ワクチン療法」でステージ4のがんを治療する方法について紹介しています。がんの進行度により、医師と相談して検討しましょう。
画像引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
痛み・副作用の少ない放射線療法
放射線治療のトモセラピーに特化したクリニックで、重粒子線、陽子線などの先進医療での治療を断られた方にも、ステージ4で「手立てがない」と言われた方にも、身体に優しいがん治療をお探しの方にも、痛み・副作用の少ない治療を行います。薬剤との併用により、より積極的な治療を行うことも可能です。
所在地 | 東京都渋谷区元代々木町33-12 |
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電話番号 | 03-6407-9407 |
画像引用元:銀座鳳凰クリニック公式HP
(https://www.ginzaphoenix.com/)
患者の細胞からワクチンを作製
免疫細胞を研究している院長のもと、免疫の司令塔である樹状細胞を使ってがん免疫療法を行っているクリニックです。患者様専用のワクチンを作るイメージで、治療の手立てがないと言われた患者様へも提供可能な治療法です。しっかりと寄り添って治療を進めていく姿勢も、治療を選択する要因になっているようです。
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング6F |
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電話番号 | 03-6263-8163 |
画像引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
新しいがん治療薬の導入に積極的
抗がん剤による薬物療法が進む中、「先端医療開発科」が創設され、新しいがん治療薬での治療をいち早く受けられるよう、早期臨床開発を推進している病院です。幅広い知識と経験を持つ専任医師とスタッフが、それぞれの患者様に合った臨床試験を提案し、これまでの薬では治らなかったがんの治療に取り組んでいます。
所在地 | 東京都江東区有明3-8-31 |
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電話番号 | 03-3520-0111(大代表) |