「治す」だけでなく「防ぐ」免疫療法の夜明け
これまで「がん」といえば、発見後に治療を行う“対症的な病”というイメージが根強くありました。手術、放射線、化学療法などの治療法は年々進化しているものの、がんの発症自体を防ぐ、あるいは再発のリスクを下げることには限界があります。
しかし近年、「免疫療法」が“治す治療”だけでなく、“がんを未然に防ぐ予防の選択肢”としても注目され始めています。私たちの体には、がん細胞を発見して排除する「免疫監視機能」が備わっており、免疫療法はこれを活性化・強化することで、発症前の段階からがんを抑制する可能性を秘めています。
本記事では、がん免疫療法の予防医療への応用について、トレンドや今後の展望を交えながらご紹介します。
がん免疫療法とは、患者自身の免疫システムを利用してがんを攻撃・抑制する治療法です。免疫細胞(特にT細胞)ががん細胞を異物と認識し、排除する力を最大限に引き出すことで治療効果を発揮します。
近年では、以下のようなタイプの免疫療法が実用化されています。
現在、これらは主に進行がんや再発がんの治療に使われていますが、免疫の力を予防的に活用するアプローチが、いま世界的に注目されています。
がん予防における免疫の成功例として広く知られているのが、「ウイルス由来のがんに対するワクチン」です。具体的には、以下の2つが代表的です。
これらの事例は、免疫を利用して“がんの原因そのものを断つ”という考え方を体現しており、免疫療法が予防医療の有力な手段となりうることを実証しています。
ウイルスが関与しない「非ウイルス性のがん」に対しても、免疫を活用した予防が可能ではないか──。その問いに応えるべく、近年ではネオアンチゲンワクチンやmRNAワクチンなど、次世代技術の研究が進んでいます。
がん細胞特有の遺伝子変異から生じる「異物の目印」。正常細胞には存在しないため、免疫が選択的に攻撃できる。
COVID-19ワクチンで知られるmRNA技術は、個々のがん患者の遺伝子情報に応じたオーダーメイドワクチンへの応用が期待されています。
たとえば、**Lynch症候群(遺伝性がんのリスクが高い疾患)**の患者を対象としたワクチン「Nous-209」では、複数のネオアンチゲンを含むmRNAワクチンの臨床試験が進行中です。現在フェーズ1/2段階で、免疫応答が確認されつつあり、「がんになる前に免疫で備える」という概念が現実味を帯びてきています。
発症前の“完全な予防”だけでなく、「前がん病変」や「がんの再発リスクが高い状態」に対して免疫療法を用いる**“二次予防”**の研究も進んでいます。
たとえば、**大腸腺腫(がん化リスクのある良性腫瘍)**に対して免疫チェックポイント阻害薬を投与することで、腺腫の進展を抑える臨床研究が行われています。
また、がん切除後の補助療法として、再発防止の目的で免疫療法を追加する臨床試験も活発です。免疫記憶を利用して、微小残存がん細胞の再増殖を防ぐ狙いがあります。
このように、「がんの早期段階」や「再発のリスクが高い段階」でも、免疫の力を活用できる時代が到来しつつあります。
すべての人に同じ予防法が効果的であるとは限りません。そこで今注目されているのが、**プレシジョン予防医療(精密予防)**という考え方です。これは、遺伝子・免疫・生活習慣などの個別情報に基づいて、リスクや予防法を最適化するアプローチです。
がん予防におけるプレシジョン戦略では、以下のような技術が活用されつつあります。
今後は、「この人にはネオアンチゲン型ワクチンが効きそう」「この段階ならmRNAワクチンが有望」など、**“オーダーメイド型の予防”**が可能になると期待されています。
最先端の予防免疫療法が進化する一方で、日常的な生活習慣が免疫機能に与える影響も極めて重要です。科学的なエビデンスに基づいた「免疫を整える生活習慣」は、がん予防の“土台”とも言えます。
免疫細胞(特にナチュラルキラー細胞)の活性が高まり、がん細胞への防御力が強化される。
ビタミンA・C・D、亜鉛、乳酸菌などが免疫調節に寄与し、炎症反応の制御やT細胞の成熟に効果。
慢性炎症を抑制し、抗腫瘍免疫の促進に有効。週150分程度の中強度有酸素運動が推奨される。
これらの要素は、免疫療法・ワクチン療法の効果を**高める“相乗効果”**も報告されています。最新医療と日常ケアの両輪が、がん予防の成功率を左右すると言えるでしょう。
予防医療としての免疫療法には期待が集まる一方で、いくつかの課題も指摘されています。
免疫を活性化する以上、過剰反応(自己免疫疾患や炎症の悪化)を招くリスクがあるため、慎重な評価が必要。
ワクチンによる“がん抗原記憶”がどれくらい維持されるか、長期フォローアップ研究が進行中。
個別化ワクチンは高度な設計・製造プロセスが必要であり、一般化には費用面の課題も残る。
現在、世界各国で産学官連携による予防免疫の臨床試験(Phase1〜3)が進んでおり、2025年以降には一部のがん種における予防型ワクチンの実用化も見込まれています。近い将来、「がんになってから治す」のではなく、「がんにならないように準備する」という新しい医療スタイルが普及していくかもしれません。
がん免疫療法は、かつて「治療の最後の砦」と考えられていました。しかし、今やその可能性は“発症前”や“再発予防”というステージにまで広がりつつあります。
「がんを防ぐ免疫」という選択肢は、私たち一人ひとりが主体的に健康を考えるきっかけになるかもしれません。
【免責事項】※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や予防法を推奨するものではありません。がんの予防や治療に関する方針は、患者さんご自身の健康状態やリスク、主治医の判断によって大きく異なります。予防や治療を検討される場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
当サイトでは、保険診療で受ける「抗がん剤治療」と、自由診療で受ける「トモセラピー」や「樹状細胞ワクチン療法」でステージ4のがんを治療する方法について紹介しています。がんの進行度により、医師と相談して検討しましょう。
画像引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
痛み・副作用の少ない放射線療法
放射線治療のトモセラピーに特化したクリニックで、重粒子線、陽子線などの先進医療での治療を断られた方にも、ステージ4で「手立てがない」と言われた方にも、身体に優しいがん治療をお探しの方にも、痛み・副作用の少ない治療を行います。薬剤との併用により、より積極的な治療を行うことも可能です。
所在地 | 東京都渋谷区元代々木町33-12 |
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電話番号 | 03-6407-9407 |
画像引用元:銀座鳳凰クリニック公式HP
(https://www.ginzaphoenix.com/)
患者の細胞からワクチンを作製
免疫細胞を研究している院長のもと、免疫の司令塔である樹状細胞を使ってがん免疫療法を行っているクリニックです。患者様専用のワクチンを作るイメージで、治療の手立てがないと言われた患者様へも提供可能な治療法です。しっかりと寄り添って治療を進めていく姿勢も、治療を選択する要因になっているようです。
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング6F |
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電話番号 | 03-6263-8163 |
画像引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
新しいがん治療薬の導入に積極的
抗がん剤による薬物療法が進む中、「先端医療開発科」が創設され、新しいがん治療薬での治療をいち早く受けられるよう、早期臨床開発を推進している病院です。幅広い知識と経験を持つ専任医師とスタッフが、それぞれの患者様に合った臨床試験を提案し、これまでの薬では治らなかったがんの治療に取り組んでいます。
所在地 | 東京都江東区有明3-8-31 |
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電話番号 | 03-3520-0111(大代表) |