免疫療法は、近年のがん治療において大きな革新をもたらしました。中でも「免疫チェックポイント阻害薬」は、従来の抗がん剤では効果が得られなかった進行がんに対しても治療効果を示し、“第4のがん治療法”として高く評価されています。
しかし、すべての患者に対して効果が期待できるわけではありません。一部のがん患者では、免疫療法がまったく効かない、あるいは一時的に効果があってもすぐに再燃してしまうといった「抵抗性(レジスタンス)」が報告されています。
本記事では、がんが免疫療法に抵抗性を示すメカニズムと、それに対処するための戦略について、わかりやすく解説します。
免疫療法に対する抵抗性には、大きく分けて2つのタイプがあります。
治療開始前から、免疫療法がまったく効かないケースです。がん細胞が免疫に認識されない、あるいは免疫系が十分に活性化しないといった要因が関与します。
治療の初期には効果が見られたものの、途中から効果が弱まったり、再発・転移を起こしたりするケースです。治療によって選択圧がかかり、がん細胞が免疫攻撃を回避するよう進化することが原因と考えられています。
このように、抵抗性は単なる「効かない」という事実ではなく、がん細胞と免疫の“攻防戦”の結果として生じているのです。
がん細胞は、生き残るためにさまざまな手段で免疫から逃れようとします。代表的な抵抗性メカニズムには、以下のようなものがあります。
免疫細胞が標的とする「がん抗原」をがん細胞が失う、あるいは発現を下げることで、T細胞に認識されにくくなります。
T細胞ががん細胞を攻撃するには、MHCという“目印”が必要です。がん細胞がこのMHCを減少・欠失させることで、T細胞の攻撃を逃れます。
がん細胞や周囲の免疫抑制細胞が、TGF-βやIL-10などの免疫抑制物質を分泌し、T細胞の活性を抑え込みます。
長期間にわたってがんと戦ってきたT細胞が、次第に反応性を失っていく現象。PD-1やLAG-3などの「疲弊マーカー」の発現が増加します。
このような多層的な防御機構により、がんは巧妙に免疫の目をかいくぐって生存を続けるのです。
がん細胞だけでなく、その周囲の腫瘍微小環境(TME: Tumor Microenvironment)も抵抗性に大きな役割を果たします。
免疫反応を抑制する役割を持ち、がんの周囲に集まることでT細胞の活性を妨げます。
免疫抑制性のサイトカインを分泌し、抗腫瘍免疫を阻害します。
細胞外マトリクスを構築し、T細胞のがん組織への浸潤を物理的に妨げます。
また、低酸素・低栄養・酸性環境といった代謝的な環境も、免疫細胞の機能を抑え込む方向に働きます。つまり、がんは単体ではなく「自分に都合のいい環境」を作り上げ、免疫の攻撃をかわしているのです。
がんの免疫抵抗性に対抗するための有望な手段のひとつが、併用療法(コンビネーション治療)です。単剤で効果が得られにくい場合でも、異なる作用機序を持つ薬剤を組み合わせることで、免疫反応を再活性化できる可能性があります。
腫瘍の血管新生を抑えることで、免疫細胞の浸潤性が高まり、T細胞ががん細胞に届きやすくなります。
放射線によってがん細胞が免疫原性細胞死を起こし、“がん抗原”が免疫に認識されやすくなる現象(アブスコパル効果)を狙ったアプローチです。
一部の抗がん剤(例:シスプラチン、パクリタキセル)は、がん細胞を死滅させると同時に免疫活性化作用を持つとされており、免疫療法の補完的役割が期待されています。
このように、がん細胞の防御網を一つずつ崩していく多面的な治療戦略が、免疫療法の効果を最大化する鍵となっているのです。
免疫療法に対する効果の個人差や抵抗性を克服するうえで重要なのが、個別化医療(プレシジョンメディシン)の視点です。がんや患者ごとに異なる遺伝子情報・免疫状態を把握し、「誰に、どの治療が効くか」を事前に見極めることで、より効果的な治療戦略が可能になります。
免疫チェックポイント阻害薬(例:オプジーボ)の効果を予測する指標として使用されます。
がん細胞が持つ遺伝子の変異数が多いと、免疫に認識されやすく、治療効果が高まる可能性があります。
DNA修復機能に異常があるがんで、免疫療法に高い奏効率が見られるケースが多いです。
がん組織内にT細胞が多く入り込んでいる“ホット腫瘍”と、ほとんど免疫細胞が存在しない“コールド腫瘍”では治療反応が大きく異なります。
今後は、複数のバイオマーカーを統合的に評価し、AIやビッグデータを用いた最適な治療選択が進んでいくと期待されています。
従来の免疫療法では克服が難しかった抵抗性がんに対して、新しい技術やアプローチが登場しつつあります。
患者自身のがん組織から抽出したT細胞を体外で増殖・活性化し、再び体内へ戻すことで、より高い殺傷能力を持った免疫反応を誘導する治療です。
がん細胞とT細胞を同時に結びつけることで、がん細胞を効率的に攻撃させる仕組み。CAR-Tよりも汎用性が高く、固形がんへの応用が期待されています。
個々のがんに特異的なネオアンチゲンをコードするmRNAワクチンと、チェックポイント阻害薬を併用することで、免疫応答の“初動”を高め、T細胞を活性化させる試みが進行中です。
このように、がんと免疫の“複雑なゲーム”に対して、より精密で個別化された戦略が次々と登場しているのが現状です。
免疫療法は確かにがん治療に大きな変革をもたらしましたが、万能ではありません。すべてのがんに効くわけではなく、「効かない理由=抵抗性」の理解が必要不可欠です。
しかし、それは絶望を意味するのではありません。
がんとの戦いにおいて重要なのは、「今、何が効かないのか」を正しく知り、新しい一手を探し続ける姿勢です。免疫療法における抵抗性もまた、がん治療の次なる進化のための貴重な手がかりとなるのです。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。がんの治療法選択や効果については、患者さんの個別の病状、遺伝的要因、医療機関の判断によって大きく異なります。免疫療法を含む治療方針については、必ず主治医または専門の医療機関にご相談ください。
当サイトでは、保険診療で受ける「抗がん剤治療」と、自由診療で受ける「トモセラピー」や「樹状細胞ワクチン療法」でステージ4のがんを治療する方法について紹介しています。がんの進行度により、医師と相談して検討しましょう。
画像引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
痛み・副作用の少ない放射線療法
放射線治療のトモセラピーに特化したクリニックで、重粒子線、陽子線などの先進医療での治療を断られた方にも、ステージ4で「手立てがない」と言われた方にも、身体に優しいがん治療をお探しの方にも、痛み・副作用の少ない治療を行います。薬剤との併用により、より積極的な治療を行うことも可能です。
所在地 | 東京都渋谷区元代々木町33-12 |
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電話番号 | 03-6407-9407 |
画像引用元:銀座鳳凰クリニック公式HP
(https://www.ginzaphoenix.com/)
患者の細胞からワクチンを作製
免疫細胞を研究している院長のもと、免疫の司令塔である樹状細胞を使ってがん免疫療法を行っているクリニックです。患者様専用のワクチンを作るイメージで、治療の手立てがないと言われた患者様へも提供可能な治療法です。しっかりと寄り添って治療を進めていく姿勢も、治療を選択する要因になっているようです。
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング6F |
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電話番号 | 03-6263-8163 |
画像引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
新しいがん治療薬の導入に積極的
抗がん剤による薬物療法が進む中、「先端医療開発科」が創設され、新しいがん治療薬での治療をいち早く受けられるよう、早期臨床開発を推進している病院です。幅広い知識と経験を持つ専任医師とスタッフが、それぞれの患者様に合った臨床試験を提案し、これまでの薬では治らなかったがんの治療に取り組んでいます。
所在地 | 東京都江東区有明3-8-31 |
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電話番号 | 03-3520-0111(大代表) |