子宮内膜がん(子宮体がん)は、近年増加傾向にある婦人科がんの一つです。その多くは早期に発見されれば手術や放射線療法、化学療法により比較的良好な予後が得られます。しかし、進行例や再発例では治療が難しく、新たな治療選択肢が求められてきました。
近年、がん治療の分野で大きな注目を集めているのが免疫療法です。中でも、dMMR(DNAミスマッチ修復欠損)を有する腫瘍に対する効果が高いことが報告されており、子宮内膜がんでも有望なアプローチとして期待されています。本コラムでは、このdMMR腫瘍に対する免疫療法の効果や臨床試験の進展状況、今後の展望について解説します。
dMMRとは、DNAのミスマッチ修復機能に欠損がある状態を指します。正常な細胞では、DNAに生じた誤りを修復するメカニズムが備わっていますが、dMMR細胞ではこの修復がうまく働かず、突然変異が蓄積しやすくなります。こうした腫瘍はMSI-High(マイクロサテライト不安定性が高い)とも呼ばれることがあり、さまざまな変異を抱えるため、免疫系から見て強い“異物信号”を発する可能性が高まります。
子宮内膜がんにおいては、dMMR腫瘍は全体の一部を占めるものの、予後が比較的よい場合も多いとされてきました。一方で、再発や進行例では治療選択肢が限られるため、この特性を活かした免疫療法が注目され始めています。
免疫療法は、患者が本来備えている免疫力を活用・強化して、がん細胞を攻撃する治療法です。特に重要なのが免疫チェックポイント阻害剤で、PD-1/PD-L1やCTLA-4などの経路をブロックすることで、T細胞の攻撃力を高めます。
dMMR腫瘍は突然変異が多いため、ネオアンチゲンと呼ばれる新たな抗原が生まれやすく、免疫系に「敵」として認識されやすくなります。その結果、免疫チェックポイント阻害剤を用いるとT細胞が強力に腫瘍を攻撃しやすくなるというメカニズムが注目されています。大腸がんの一部で既に報告されているように、dMMR腫瘍を持つ患者では高い奏効率が得られるケースが多く、子宮内膜がんでも同様の効果が期待されるのです。
いくつかの試験では、進行性子宮内膜がん(特にdMMR腫瘍)に対し、奏効率が20~40%程度、場合によってはそれ以上という報告もあり、従来の治療と比較しても注目に値する結果が得られつつあります。さらに、治療が奏効した患者では、長期寛解が得られる可能性も示唆されており、今後さらにデータが蓄積されれば、標準治療の一角を担うかもしれません。
免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍免疫を高める一方、irAEs(免疫関連有害事象)と呼ばれる副作用を引き起こすリスクもあります。具体的には、自己免疫疾患のような症状が現れることがあり、皮膚、内分泌系(甲状腺など)、肝臓や肺など、多様な臓器が影響を受ける可能性があります。
早期発見と迅速な対応(ステロイドの投与など)が重症化の防止には不可欠です。子宮内膜がんにおいても同様のマネジメントが必要で、患者さんや医療チームが連携して症状をモニターする体制が重要になります。
dMMR腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害剤単独療法が注目される一方で、併用療法の可能性も検討されています。
腫瘍変異負荷(TMB)や遺伝子解析に基づいた最適化治療が進めば、より高い奏効率と長期生存を期待できるかもしれません。
dMMR腫瘍を有する子宮内膜がんに対する免疫療法は、これまで選択肢の限られていた再発・進行例にとって、新たな希望となりつつあります。臨床試験の結果や副作用管理の知見が蓄積されれば、より多くの患者さんがこの治療を受けられるようになるかもしれません。
免疫療法は今まさに研究が加速している分野であり、個別化医療の時代を先導する大きな可能性を秘めています。患者や医療従事者にとっては、これらの情報を正しく把握し、治療戦略を練るための連携がますます重要となるでしょう。
【免責事項】本コラムは子宮内膜がんに対するdMMR腫瘍への免疫療法に関する一般的な情報提供を目的としています。実際の治療法選択は、患者個々の状況や主治医の判断によって異なります。具体的な治療計画については、必ず専門の医療機関でご相談ください。
当サイトでは、保険診療で受ける「抗がん剤治療」と、自由診療で受ける「トモセラピー」や「樹状細胞ワクチン療法」でステージ4のがんを治療する方法について紹介しています。がんの進行度により、医師と相談して検討しましょう。
画像引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
痛み・副作用の少ない放射線療法
放射線治療のトモセラピーに特化したクリニックで、重粒子線、陽子線などの先進医療での治療を断られた方にも、ステージ4で「手立てがない」と言われた方にも、身体に優しいがん治療をお探しの方にも、痛み・副作用の少ない治療を行います。薬剤との併用により、より積極的な治療を行うことも可能です。
所在地 | 東京都渋谷区元代々木町33-12 |
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電話番号 | 03-6407-9407 |
画像引用元:銀座鳳凰クリニック公式HP
(https://www.ginzaphoenix.com/)
患者の細胞からワクチンを作製
免疫細胞を研究している院長のもと、免疫の司令塔である樹状細胞を使ってがん免疫療法を行っているクリニックです。患者様専用のワクチンを作るイメージで、治療の手立てがないと言われた患者様へも提供可能な治療法です。しっかりと寄り添って治療を進めていく姿勢も、治療を選択する要因になっているようです。
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング6F |
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電話番号 | 03-6263-8163 |
画像引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
新しいがん治療薬の導入に積極的
抗がん剤による薬物療法が進む中、「先端医療開発科」が創設され、新しいがん治療薬での治療をいち早く受けられるよう、早期臨床開発を推進している病院です。幅広い知識と経験を持つ専任医師とスタッフが、それぞれの患者様に合った臨床試験を提案し、これまでの薬では治らなかったがんの治療に取り組んでいます。
所在地 | 東京都江東区有明3-8-31 |
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電話番号 | 03-3520-0111(大代表) |