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多発転移がある場合の治療選択肢

複数の転移が見つかると、「すべての病巣を治療できるのか」「もう抗がん剤しかないのか」と不安になる方もいるでしょう。

多発転移がある場合の治療は、転移の数だけで決まるものではありません。原発がんの種類、転移した臓器、病巣の大きさや広がり、進行の速さ、これまでに受けた治療、患者さんの全身状態などを踏まえて検討されます。

抗がん剤など、全身に働きかける治療が中心になる場合もあれば、症状の原因となっている病巣や、一部だけ進行している病巣に対し、放射線治療などの局所治療を組み合わせる場合もあります。

また、すべての病巣を小さくすることだけでなく、痛みや出血、圧迫などの症状を和らげ、生活の質を保つことも重要な治療目的です。

このページでは、多発転移の意味、治療方針を決める要素、全身治療と局所治療の役割、主治医へ確認したいことについて解説します。

※2026年7月時点の情報をもとに作成しています。治療の適応は、原発がんの種類、転移部位、病巣の数や大きさ、治療歴、全身状態などによって異なります。具体的な治療方針は主治医や相談先の医師へ確認してください。

目次

多発転移とは

多発転移とは、原発巣とは別の場所に複数の転移病巣が見つかっている状態を指します。

一つの臓器内に複数の転移病巣がある場合もあれば、複数の臓器に転移が見つかっている場合もあります。

ただし、診療の場では、がんの種類や病状によって使われる言葉が異なることがあります。現在どの部位に、いくつの病巣が確認されているのかを、主治医に具体的に確認することが大切です。

複数の転移病巣がある状態

多発転移には、次のような状態が含まれます。

病巣の数が同じであっても、転移した臓器や病巣の大きさ、進行速度などによって、治療方針は異なります。

多発転移と多臓器転移の違い

言葉 主な意味
多発転移 複数の転移病巣がある状態
多臓器転移 複数の臓器に転移が見つかっている状態
遠隔転移 原発部位から離れた臓器や組織への転移
再発 治療後に、同じ部位や別の部位でがんが再び見つかること

一つの臓器に複数の転移がある場合は多発転移と説明されることがありますが、複数の臓器へ広がっているとは限りません。

反対に、複数の臓器へ転移していても、それぞれの臓器に一つずつ病巣がある場合もあります。

「全身転移」という言葉だけで状態を判断しない

患者さんや家族が、広い範囲に転移がある状態を「全身転移」と表現することがあります。

ただし、「全身転移」という言葉だけでは、どの臓器にどの程度の転移があるのかを正確に把握できません。

また、全身のすべての場所に、がん細胞が一様に広がっているという意味とも限りません。

治療方針を考えるときは、次の点を具体的に確認しましょう。

多発転移でも治療方針は一人ひとり異なる

多発転移と診断されても、すべての患者さんに同じ治療が行われるわけではありません。

治療方針は、病巣の数だけでなく、次のような要素をもとに検討されます。

多発転移であっても、病状によっては抗がん剤や放射線治療などを検討できる場合があります。

一方で、病巣の数が少なくても、重要な臓器に近い、全身状態が低下している、過去の治療の影響があるなどの理由で、治療が難しい場合もあります。

「転移が何個までなら治療できる」といった一律の基準で決まるものではありません。

多発転移における治療の目的

多発転移がある場合、すべての病巣をなくすことだけが治療の目的になるとは限りません。

病状によっては、がんの進行を抑えること、症状を和らげること、生活の質を維持することを目的として治療を行います。

治療の目的 主な考え方
がんの進行を抑える 全身の病変に働きかけ、進行を遅らせる
病巣を小さくする 薬物療法や局所治療による縮小を目指す
一部の進行病巣を抑える 大きくなっている病巣などを局所的に治療する
症状を和らげる 痛み、出血、圧迫、息苦しさなどを軽減する
生活の質を維持する 治療の負担を抑えながら、希望する生活を支える

現在の治療が何を目的としているのかを理解することで、治療によって期待できることや、治療を続ける意味を整理しやすくなります。

患者さん本人が何を重視したいかについても、主治医や家族と共有しましょう。

抗がん剤などの全身治療

多発転移がある場合は、画像で確認できる病巣だけでなく、画像では確認できないがん細胞の存在も考え、全身に働きかける薬物療法が中心になることがあります。

使用する薬は、原発がんの種類、病理診断、遺伝子変異、これまでの治療歴、全身状態などをもとに選ばれます。

細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みに働きかけ、がん細胞の増殖を抑える薬です。

血液を通じて全身に広がるため、複数の臓器や病巣へ働きかけることを目的として使用されます。

がんの種類によって、一つの薬を使う場合と、複数の薬を組み合わせる場合があります。

治療中は、画像検査や症状の変化を確認しながら、効果と副作用のバランスを見て治療を続けます。

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖などに関係する特定の分子を標的として働く薬です。

使用するために、特定の遺伝子変異やたんぱく質の発現などが確認されていることが条件になる薬もあります。

病理検査、遺伝子検査、バイオマーカー検査などの結果によって、使用できるかどうかが異なります。

分子標的薬にも副作用があり、薬によって皮膚症状、高血圧、下痢、肝機能障害などが起こることがあります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞ががんを攻撃する働きを保つための薬です。

すべてのがんや患者さんに使用できるわけではなく、がんの種類、治療歴、バイオマーカーなどによって適応が異なります。

免疫の働きに関係する特有の副作用として、肺、腸、肝臓、甲状腺などに炎症が起こることがあります。

内分泌療法・ホルモン療法

乳がんや前立腺がんなど、ホルモンの影響を受けて増殖するがんでは、内分泌療法やホルモン療法が検討されることがあります。

ほかの薬物療法と比べ、長期間継続する場合もあります。

どの薬を使用するかは、がんの性質やこれまでの治療歴などをもとに決められます。

全身治療の効果判定

全身治療の効果は、腫瘍が小さくなったかどうかだけでなく、複数の情報をもとに判断します。

複数の病巣がある場合、すべての病巣が同じように反応するとは限りません。多くの病巣は小さくなっていても、一部だけ大きくなる場合があります。

一部の病巣に対する放射線治療

放射線治療は、放射線を照射した特定の病巣に働きかける局所治療です。

多発転移がある場合でも、症状の原因となる病巣や、一部だけ進行している病巣に対し、放射線治療が検討されることがあります。

ただし、抗がん剤などの全身治療とは役割が異なり、放射線治療だけで全身の病巣へ働きかけるものではありません。

症状の原因となる病巣への照射

放射線治療は、がんを小さくすることだけでなく、症状を和らげる目的でも行われます。

次のような症状や状態に対して、照射を検討することがあります。

症状緩和が目的の場合は、身体への負担や治療期間を考慮し、比較的少ない回数で照射することもあります。

一部だけ進行している病巣への照射

薬物療法によって多くの病巣が抑えられていても、一部の病巣だけが大きくなる場合があります。

病状によっては、現在の薬物療法を続けながら、進行している一部の病巣へ放射線治療を追加することがあります。

一方で、全身治療そのものを変更した方がよい場合もあるため、腫瘍内科や放射線治療科など複数の診療科で検討されることがあります。

複数の病巣への放射線治療

病巣の位置や大きさ、症状、過去の治療歴などによっては、複数の病巣への放射線治療を検討する場合があります。

同じ時期に複数箇所を治療する場合もあれば、症状や優先順位に応じて、時期を分けて照射する場合もあります。

複数の病巣へ照射する際は、次の点を確認します。

多発転移があるからといって、すべての病巣へ放射線を照射できるとは限りません。

放射線治療だけで全身のがんに対応できるとは限らない

放射線治療は、主に画像などで位置を確認できる病巣を対象とします。

画像では確認できない小さながん細胞や、全身に広がる可能性がある病変に対しては、局所的な放射線照射だけで対応することはできません。

多発転移では、全身治療と局所治療の役割を分け、どの病巣を何の目的で治療するのかを確認することが大切です。

多発転移でも手術やその他の局所治療を検討する場合

多発転移がある場合は、一般に全身治療が中心となることがありますが、病状によっては手術やその他の局所治療が検討される場合もあります。

適応は、病巣の数、位置、全身状態、治療目的などをもとに個別に判断されます。

手術

多発転移がある場合、すべての病巣を手術で取り除くことは難しいことがあります。

一方で、次のような目的で手術が検討される場合があります。

手術によって期待できる利益と、身体への負担を比較して判断されます。

ラジオ波焼灼療法・凍結療法など

特定の臓器や病巣では、針などを病巣に挿入し、熱や低温によってがん細胞へ働きかける局所治療が検討されることがあります。

対象となる病巣の大きさ、位置、数などには条件があり、すべての多発転移に行える治療ではありません。

実施できる医療機関も限られるため、専門医へ相談する必要があります。

血管内治療・塞栓術など

がんの種類や病巣の部位によっては、血管内からカテーテルを進めて治療する方法や、腫瘍へ血液を送る血管を塞ぐ方法などが検討されることがあります。

出血を抑えることや、特定の臓器内の病巣へ働きかけることなどが目的となります。

治療の適応は、病巣の位置や血管の状態、全身状態などをもとに専門医が判断します。

多発転移の状態によって治療方針は異なる

「多発転移」と呼ばれる状態の中にも、病巣の数や広がり方によって複数の状況があります。

転移が限られた数にとどまっている場合

転移している病巣の数や臓器が限られている状態では、病状によって手術や放射線治療などの局所治療を積極的に検討する場合があります。

ただし、病巣の数が少なければ必ず根治を目指せるという意味ではありません。

原発がんの種類、転移した部位、転移が見つかるまでの期間、これまでの治療歴などを踏まえて判断されます。

一つの臓器に多数の転移がある場合

一つの臓器内に複数の転移がある場合でも、転移した臓器によって症状や治療方法は異なります。

全身治療を中心としながら、症状や病巣の位置に応じて局所治療を組み合わせることがあります。

複数の臓器に転移がある場合

複数の臓器に転移がある場合は、全身に働きかける抗がん剤などの薬物療法が中心になることがあります。

一方で、症状の原因となっている病巣や、緊急性の高い病巣を優先して局所治療する場合もあります。

すべての病巣を同時に治療するのではなく、治療の目的や緊急性に応じて優先順位をつけることがあります。

一部の病巣だけ進行している場合

現在の薬が多くの病巣には効いているものの、一部だけが大きくなることがあります。

このような場合は、次のような選択肢が検討されることがあります。

腫瘍内科や放射線治療科など、複数の診療科で治療方針を検討することがあります。

転移部位によって注意したい症状

転移した臓器や病巣の位置によっては、早めの対応が必要となる症状が現れることがあります。

転移部位 起こることがある症状
頭痛、吐き気、けいれん、手足の動かしにくさ、意識の変化
痛み、骨折、しびれ、手足の動かしにくさ
肺・胸膜 息苦しさ、咳、胸水
肝臓 倦怠感、食欲低下、黄疸、腹部の張り
腹膜 腹水、腹部膨満、食欲低下、腸閉塞
リンパ節 腫れ、痛み、血管・神経・気道などの圧迫

これらの症状があるからといって、必ず転移が原因とは限りません。

ただし、急に手足が動かしにくくなった、意識が変化した、強い息苦しさがある、急激に痛みが悪化したといった場合は、早めに医療機関へ連絡してください。

夜間や休日に症状が悪化した場合の連絡先も、あらかじめ確認しておきましょう。

症状を和らげる治療と緩和ケア

多発転移がある場合でも、がんを小さくする治療だけでなく、つらい症状を和らげるための治療や支援を受けられます。

緩和ケアは、積極的ながん治療をすべて終えた後だけに受けるものではありません。

抗がん剤や放射線治療と並行して、必要な時期から利用できます。

症状を我慢せず、痛み、息苦しさ、食欲低下、不眠、不安などがあれば、早めに医療者へ伝えましょう。

多発転移があるときに主治医へ確認したいこと

多発転移が見つかったときは、病巣の数だけでなく、治療の目的や優先順位についても確認しましょう。

診察時に質問したいことをメモしておき、家族などに同席してもらう方法もあります。

多発転移の治療について別の医師へ相談する

現在の治療方針について別の意見を聞きたい場合や、放射線治療など特定の治療を受けられるか確認したい場合は、セカンドオピニオンや治療相談を利用する方法があります。

相談内容に応じて、次のような診療科や医療機関が候補になります。

別の医療機関へ相談するときは、これまでの診断や治療経過を確認できる資料を準備します。

相談先で治療を受けたい場合は、セカンドオピニオンではなく、初診や治療相談として申し込む必要がある場合があります。

多発転移がある場合の治療選択肢を比較する

多発転移に対する治療は、一つの方法だけでなく、複数の治療を組み合わせて行うことがあります。

選択肢 主な対象・目的 確認したいこと
抗がん剤などの全身治療 全身の病巣への進行抑制 適応、治療効果、副作用
放射線治療 特定の病巣の治療・症状緩和 照射部位、治療回数、過去の照射歴
手術・その他の局所治療 限られた病巣や症状の原因への対応 病巣数、位置、身体への負担
がんゲノム医療 遺伝子変化に対応する薬や治験を探す 検査条件、対応する薬が見つかる可能性
治験・臨床試験 研究段階の薬や治療法を検討する 参加条件、リスク、通院負担
緩和ケア 痛みや不安などを軽減し、生活を支える 利用時期、外来・入院・在宅での支援体制

治療法別に多発転移の相談先を確認する

多発転移の相談先は、病巣の数だけでなく、何を相談したいかによって異なります。

抗がん剤や治験を相談したいのか、画像で確認できる病巣への放射線治療を検討したいのか、自由診療の免疫療法について確認したいのかを整理しましょう。

医療機関 主な治療 診療区分 相談しやすい内容
クリニックC4 トモセラピー 自由診療 画像で確認できる再発・多発転移病巣への放射線治療
Ginza Phoenix Clinic WT1-樹状細胞療法 自由診療 自由診療の免疫療法を検討したい場合
がん研有明病院 抗がん剤治療・治験 保険診療 標準治療、別の薬物療法、治験を相談したい場合

医療機関へ相談しても、すべての病巣を治療できるとは限りません。

治療の適応は、原発がんの種類、転移部位、病巣数、過去の治療歴、全身状態などをもとに医師が判断します。

すべての転移を治療することだけが目的とは限らない

多発転移がある場合、すべての病巣を個別に治療することが難しい場合があります。

その場合でも、何もできないという意味ではありません。

全身治療によって病状を安定させたり、症状の原因となる病巣を優先して治療したりすることで、日常生活を維持できる場合があります。

治療方針を考える際は、次のような点も重要になります。

治療を行わない病巣があることは、何もしていないという意味ではありません。

全身状態や症状を確認しながら、治療による利益が大きい病巣を優先することがあります。

病状は治療中にも変化するため、定期的に効果を確認し、必要に応じて治療方針を見直します。

多発転移の治療は全身治療と局所治療の役割を確認する

多発転移には、一つの臓器に複数の転移がある場合、複数の臓器に転移している場合、一部の病巣だけが進行している場合など、さまざまな状態があります。

転移の数だけで治療方針が決まるわけではありません。原発がんの種類、転移部位、病巣の大きさ、進行速度、治療歴、全身状態などをもとに検討されます。

複数の病巣がある場合は、抗がん剤などの全身治療が中心になることがあります。一方で、症状の原因となる病巣や一部だけ進行している病巣には、放射線治療などの局所治療を組み合わせる場合があります。

ただし、すべての病巣へ放射線を照射できるとは限りません。どの病巣を対象とし、何を目的として治療するのかを確認しましょう。

また、痛みや息苦しさなどの症状を和らげ、生活の質を維持することも重要な治療目的です。

主治医に、現在の治療の目的、優先して治療する病巣、全身治療と局所治療の役割について確認し、必要に応じてセカンドオピニオンや専門医への相談を検討してください。

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医療機関 3院

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クリニックC4<トモセラピー>

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画像引用元:Ginza Phoenix Clinic公式HP
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がん研有明病院

画像引用元:がん研有明病院公式HP
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